書士ろぐ今回は司法書士補助者をしながら合格されたえびびさんにお話を伺います。
えびびさんよろしくお願いします!
えびびえびびと申します。40代、既婚、小1と2歳の子供がいます。司法書士補助者をやりながら兼業で受験してきました。補助者受験生や家族持ちのフルタイム兼業受験生に役に立てればと思っています。
えびびさんのプロフィール
書士ろぐ合格までの道のりは決して平坦ではなかったようですね。
えびびはい。受験回数は合計13回(お試し受験等を除く)です。
正直、こんなにかかるとは思っていませんでした。
特に2回目の受験で総合点が3点足りず落ちたときは、「もうゴールは目の前だ」と思っていました。それがここまで長引くとは……本当に恐ろしい試験です。
去年の本試験も午前は30問、午後択一は25問。
午後は心許ない出来であるものの、記述の出来がかなり良かったので、総合で巻き返せると踏んでいましたが、まさかのマークミスで午後択一の基準点割れで採点されず…
立ち直るのに少しだけ時間がかかりましたが、なんとか今年ギリギリですが、合格することができました。
書士ろぐ総合落ちから苦労されているんですね…普通なら途中であきらめてしまうところを続けられているのが凄いです。
えびび実は途中受験から離れていた時期もありました。
3回目の受験後、両親の健康上の理由で転職やサポートが必要になったのもあり、勉強が手につかなくなりました。
その後も、当時の仕事に熱中し、仲間にも恵まれ、司法書士になりたい気持ちは残っていたものの、受験生とは程遠い生活をしていました。
実際のところ、受験を辞める気はなかったので、撤退というよりはずるずるフェードアウトといった状況でした…
書士ろぐそういうご事情があったんですね。
何か司法書士の勉強に向き合うきっかけはあったんですか?
えびび復帰のきっかけは、前職で他社からの転職の誘いを受けたことでした。
そこで、「司法書士を目指し続けるのか」「今の仕事の道に進むのか」を真剣に考えることになりました。
結果、転職の誘いを断り、司法書士事務所への転職。
ようやく再び苦行に向き合う覚悟を決めました。
えびびさんの本年度司法書士試験成績

書士ろぐ今年の試験について振り返るとどうでしたか?
えびび何年やっても準備万端になんてできませんでした。
今年については、商法系は演習量不足。憲刑は答練のみ。
まともに受けられた模試は伊藤塾2回目のみでした。
それでも、開き直って本番を迎えられたと思います。大ベテラン受験生の経験が活きます。

書士ろぐ本試験前日はどのように過ごしたのですか?
えびび本試験の2日前からホテルに入りました。
理由は2つありまして、
ひとつは、前日に慌てたくなかったこと。
もうひとつは、子どもたちがいない環境で、最後の数日だけでも集中したかったからです。
ホテルも宿泊プランも、毎年同じ。
こういうルーティン化で、不測の事態を極力減らしていました。
書士ろぐ試験当日はどうでしたか?
えびび当日、午前択一は時間に余裕もあり、マークの見直しも問題なし。
お昼は、軽めにコンビニのおにぎり2つとチョコレート。食べた後は散歩に出るのがルーティンになってました。
そして波乱の午後。択一は1時間弱くらいかけました。普段は50分目標ですが、採点されない恐怖からやや慎重にいきました。
そして記述。立ちはだかったのは、今年話題になった“相続登記を入れるかどうか”問題。私も例に漏れず悩みました。でも、今振り返ると、結論どうこうよりもそこに時間をかけすぎたことが最大の失敗だったと思います。
商登法では問題を一通り読んだ時点で時間が足りないと気付き、そこからは心臓バクバク、冷や汗だらけで書き殴りました。
おかげで、発表までは過去一番不安な3ヶ月を過ごすことになりましたが、なんとか合格することができました。
フルタイム勤務・育児と受験生活
平日の勉強スケジュール
書士ろぐフルタイム勤務に加え、小さなお子様もいらっしゃるとのこと。やっぱり時間の確保が最大の課題だったのではないでしょうか?
えびびまさに、それが一番の課題でした。
車で片道1時間弱かかる事務所に通い、フルタイムで仕事。残業は月40時間~50時間、そして帰宅後は家事と育児。
受験を続けるにあたって妻と交わした約束は、
・子供最優先
・週末は子供との時間を作る
・最低限の家事分担をする
この3つでした。
書士ろぐ土日も家族サービスをしながらの受験だったんですね…ますます凄い…
具体的に1日どのくらい勉強していたんですか?
えびび平日は朝8時に出発、9時から仕事。定時は18時ですが、事務所を出るのは20時頃。月末はもっと遅くなります。
帰宅は21時頃で、子供の寝かしつけや家事を終えると23時過ぎ。
そこから就寝までの時間(約8時間)をどう使うかが勝負でした。
書士ろぐ家事のあとに勉強…精神力がすごいです。
えびび平日はなんとか2時間。記述まで手を広げるなら3時間は欲しい。その時間を捻出するために削ったのは睡眠時間でした。
幸い睡眠時間は元々短めだったのですが、いざ勉強を始めると「ついでにあれも確認したい」「ここまでは終わらせたい」と欲がでてしまって……。
結局は睡眠時間が3〜4時間くらいになってしまう日も少なくありませんでした。
書士ろぐ兼業受験生だと睡眠時間を削って時間を捻出するしかないですよね。
えびびそうですね、もちろん睡眠時間は削るべきではないとは思います。それでも、やるしかなかった。「今年で終わらせるんだ」という意地もありました。今同じルーティンをやれと言われても…無理ですね(笑)
休日の勉強スケジュール
書士ろぐ休日はどう過ごしていたのでしょう?
えびび休日もまずは家族との時間が最優先でした。
食事もできるだけ担当し、その時間が気分転換にもなりました。
空き時間を見つけて勉強し、家族が寝たあとにも取り組む。不規則ながらも平日よりは勉強できる日が多かったです。
スキマ時間の活用術
書士ろぐ結構スキマ時間を活用しての勉強だったんですね!
えびびはい!詳しくは後述しますが、スマホのデータプランを無制限にし、通勤や移動の車中で講義(復習)やYouTube講義を流し、外回りや昼休みにはケータイ司法書士のアプリを活用するなどしていました。
子供を公園に連れて行くときは、その都度暗記するテーマを2つくらい絞って持って行き、まだ小さい下の子から目を離さないようにしつつ勉強時間の一部にしていました。
表や条文等をスマホで写真に撮っておき、チラ見するような感じですかね。
えびびさんの受講講座・使用教材

- メイン講座
- 伊藤塾:アドバンスコース

- 伊藤塾:ケーススタディ記述式

- 伊藤塾:演習コース(年明け答練)

- 伊藤塾:アディショナル記述式

- 伊藤塾:うかる記述式

- 伊藤塾:全国公開模擬試験(第1回、2回)
- 伊藤塾:アドバンスコース
- サブ教材
- 伊藤塾年度別過去問集

- 伊藤塾厳選過去問集

- リアリスティック 記述式問題集(基本編)
- ケータイ司法書士(アプリ)
- 姫野講師のチャンネル(YouTube)
- 伊藤塾年度別過去問集
講座選びについて
書士ろぐ講座選びで意識したことを教えてください。
えびびこれまではテキストの読み込みを疎かにし、問題を解いて満足してしまっていたように思います。
時間があるなら、全範囲を総ざらいするような講座・コースを受講すべきところでしょうが、そんな時間はありません。
・メリハリを効かせたインプット講義がある
・1コマが短めで継続しやすい
・価格が高すぎない
そんな講座はないかと探した結果、伊藤塾の「アドバンスコース」にたどり着きました。
伊藤塾アドバンスコースを選んだ理由

書士ろぐこの講座に決めた理由は何だったのでしょうか?
えびびこのコースを選んだ理由は、択一対策をするにあたり、コース内で一貫したカリキュラム、問題演習ができると思ったのが一番でした。
年内のアドバンス講義、テキスト連動のアドバンス択一演習、年明けからの択一実践力養成答練まで、すべて宇津木講師が担当されます。
書士ろぐなるほど、同じ講師が一貫して対策講座まで担当しているのが決め手だったんですね。他にも何か理由はありましたか?
えびびもう一つは、身近にこのコース出身の超上位合格者がいたことが大きかったです。彼からこのコースを勧められた際に一番印象に残った言葉は「アドバンステキストしかやってない」でした。実際、私もこのテキストから離れないようにしました。
択一講座の活用について
書士ろぐ実際講座はどのように活用されていたんですか?
えびびアドバンス講義→アドバンス演習→アドバンステキストの流れを意識していました。
講義中は押さえるべきポイントについて随所にマーク指示が入り、読み返す際の指標になります。「ここを押さえれば基準点+α」という講師の言葉を信じ、その教えを忠実に遂行しました。
復習問題のアドバンス演習でも、アドバンステキストのどこに戻ればいいか紐付けがされているため、常にテキストに立ち返ることができます。択一答練でも方向性は変えず、愚直に繰り返すのみ。
とにかくアドバンステキストに戻ることを意識しました。
書士ろぐえびびさんは択一はどのように解いていましたか?
えびび択一の解き方については、午前は全肢検討で、午後は軸肢+α検討で解いていました。
今年意識したものは、TAC姫野講師のYouTubeで仰っていた「回避」。
これまでは時間短縮を急ぐあまり、△肢で無理に判断していたところがありました。
これを、△肢なら躊躇せず排除し、他の確実な肢を探すようにしました。
一見当たり前な事にも思えますが、時間短縮のためにできてしまったクセを矯正するような感覚です。
これが自分にはハマり、午後択一だけでなく、午前にも好影響をもたらしました。
午前の民法満点はこれがなければあり得なかったでしょう。
書士ろぐちなみに講座でここはちょっと気になるなーみたいなところはありましたか?
えびびはい、ここまでベタ褒めしたアドバンス講座ですが、実は不満もありました。まずは講義時間で、1コマ45分の触れ込みでしたが、指示に従って動画を止めて確認をしていると、実質1時間を超えることもありました。出勤前に学習していたので、予定より伸びると困ることもありました。
書士ろぐ講座自体は45分で完結するといっても、動画を止める時間自体は含まれていないので、その分伸びてしまうこともあるということですね。
えびびそうなんです。もう一つはテキストの追加パワポレジュメ。
「今年からテキストに内蔵!」とあったので安心したものの、実際はテキスト巻末にまとめてあるだけで、プリントアウトの手間が省けただけでした。
できれば、テキスト内に内容として組み込んで欲しかったです。
講座以外の択一対策
書士ろぐ講座以外で択一対策で使用したものはあったのでしょうか?
えびびスキマ時間で一番利用したのはケータイ司法書士のアプリ版でした。
私の使い方は、
1.民法総則から順番通りの問題演習
2.知識の確認
3.ランダム出題の「無限ドリル」
4.過去に間違えた問題がランダムで出る「弱点克服」
これらを並行して進めました。
余裕があるときは、常にアドバンステキストに戻ることを意識しました。伊藤塾のテキストはPDFでも提供されているので、テキストを持ち運ぶことなく参照可能です。
記述講座の活用について
ケーススタディ記述式

書士ろぐ記述講座についても教えてください。
えびびコース内のケーススタディ記述式
と、合間にリアリスティック 記述式問題集(基本編)からスタートしました
書士ろぐケーススタディ記述式も宇津木講師が担当なんですよね?
えびびはい!伊藤塾の中上級コースでは山村講師の答案構成力養成答練が注目されますが、ケーススタディも非常に有益でした。
混同しやすい事例の比較を問う「事例研究編」と「アレンジ過去問」の2種類構成。
特に「事例研究編」は合否の分かれ目になりそうなポイントがまとまっていて、記述対策では一番読み込んだかもしれません。
リアリスティック記述式問題集について
書士ろぐリアリスティック記述式(基本編)を使った理由はどうしてでしょうか。
えびびケーススタディ記述式は、基本を網羅する内容ではないので、リアリスティック記述式問題集(基本編)で基本を補完するために使っていました。
記述式答案構成力養成答練について
書士ろぐアドバンスコースには年明けの答練として、山村講師の答案構成力養成答練も含まれていますが、どのように活用されていましたか?
えびび山村講師は問題の読み取りから答案作成までの過程を、丁寧に答案構成用紙にまとめていくやり方です。
講師も講義中に仰っていましたが、全部を書いていては時間がいくらあっても足りないので、本番に向けてアレンジ、というか削ぎ落としていくことになります。
私の場合、
不登法 … 時系列は書かず、蛍光ペン+簡略化した登記簿
商登法 … 役員ごとの時間軸と会社形態の変化を記録
といった方法に落ち着きました。
解き方は既に固まっていたので、新作問題での演習目的で継続受講しました。
書士ろぐ記述の復習はどのようにやっていましたか?
えびび多くの方が作成している間違いノートですが、時間がなくなり、途中からは採点済み答案に青ペンで
・間違い箇所
・理由
・対策
を追記してファイリングする方式に変更しました。
スマートではありませんが、当時の思考が蘇る見返し方法として良かったと思います。
アディショナル記述式について

書士ろぐアディショナル記述式も受講されていましたが、どんな講座なのでしょうか?
えびび申請構造以外の出題に着目し、高得点を狙う講座です。
論述問題や条文理解を問う問題への解答ポイントを解説&演習、登録免許税や添付書類はドリル演習で強化していきます。
自分は直前期に申し込んでしまったので、正直フル活用まではいけませんでした。
でも、この講座は早めに始めて、コツコツ積み上げていくのが一番いいと思います。
本当は直前期までに全部終わらせておきたかった内容でした。
あと、受講料が意外とお手頃(約1万円)なのもありがたかったですね。
うかる記述式について

書士ろぐ蛭町講師のうかる記述式も受講されていましたね、論点てんこ盛りで難しいとよく聞きますが、実際どうでしたか?
えびび自分にとって、この講座は“出陣式”みたいな存在でした。
「高地トレーニング」とよく言われていますが、本当にその通りで、問題の分量も論点もモリモリ。
「設定時間内に解くなんて無理」というレベルの問題が普通に出てきます。
その分、本試験や模試を“軽め”に感じる落差効果があるんですよね。
野球でいうと、ネクストバッターズサークルでマスコットバットを振っている感じ…伝わりますかね? あの重いバットを振ったあと、普通のバットが軽く感じる、あの感覚に近いです。
書士ろぐ本試験と比べてどうでしたか?
えびび今年の“論点モリモリ商業登記記述”も、「あの講座よりはマシかもしれない…」と思えたくらいです。
実際は時間管理で失敗して顔面蒼白でしたが、「時間さえあれば」というのが直後の感想でした。
人によっては「やり過ぎ」なんて言う方もいましたが、そのやり過ぎを求めているので、受講は有益だったと思っています。
司法書士事務所で補助者をしながら受験をするということ
書士ろぐよく補助者経験は試験に活きると言いますが、えびびさんはどうでしたか?
えびび補助者をしつつ受験をするというのは、一見実務もこなしつつ勉強もできるので、「受験にもその後にも役に立つので良い事づくしなのでは?」と思われるかもしれませんが、一概にそうとも言えません。
確かに、今年の午後択一第28問で補助者ならばと思わせる問題もありましたが、このような出題はほとんどありません。
書士ろぐ実際に役立ったことはありますか?
えびび実務に触れることで添付書類の実物のイメージができるようになる点は大きいとは思いますが、トータルで見ると資格試験の勉強とは別ものだと思います。
合格後に実務知識が繋がるとか、業界の慣習等も知ることができますが、合格後で十分間に合いますし、合格までの時間が余計にかかるようになってしまっては本末転倒です。
書士ろぐ司法書士補助者にこれから転職しようと考えている人に何かアドバイスすることは何かありますか?
えびび試験のためにわざわざ補助者になる必要はないと思いますが、もし司法書士事務所に就職するというのであれば、受験生としてマイナスにならないかの環境確認は必ずすべきです。
・残業はどれくらいか
・受験生は他にいるか
・有休の取得状況
・直前期に休めるか
・受験生制度(早退/休暇)があるか
これは絶対確認したほうがいいです。
もし難しい環境なら、辞めるか、覚悟を決めるかのどちらかです。
最後に
えびび精神論にはしたくありませんが、苦行とも言える学習範囲に、5%の競争率、採点基準も見えず、運も絡みそうな記述式等、この試験にはやはり相応の「覚悟」は必要です。
私は事務所のボスに「業務も多いし、そのうち受かればいいよ」と言われ、その言葉に甘え、「そのうち受かるだろう」と慢心していた時期がありました。
いい歳のオッサンが情けないこと言っているなと思いますが、今年はその覚悟がやっと噛み合った気がします。
「あと数点足りない」を何度も経験しましたが、最後の一押しはこういったところなのかもしれません。
書士ろぐえびびさんありがとうございました!


